2019年 折尾の家

施主は多くの蔵書を抱えた若い三人家族である。本と親しみ、様々な創意工夫をもって家を住みこなすであろうこの家族のために大きな書庫のある家を考えた。建物の半分を占める大きな書庫には、長時間の滞在が予想されるキッチンや土間の機能を部分的に配置した。反対に限定的な使用が予想される住居部分は慣習的な設えとし、主寝室をはじめ子供室・書斎・和室・シアタールームなどの各個室群が納められている。書庫は家族と多くの時間を過ごす空間である。生活への冗長性を担保するために空間はできる限りルーズに用意しておく必要があった。そのため土間の袖壁は必要最小限とし、キッチンも閉鎖的な空間を生まないよう正方形に近い形状とした。書庫のキャットウォークにかかる階段は施主と多くの検討を重ね、かなり緩い勾配となった。 空間全体に対して一見過剰とも思えるこの大きな階段は、家を建てるに当たって自身の将来や家族についてより深く考え、家を建てることを決断した施主の思いを象徴している。家族にとっては書庫部分がパブリックな場となり、住居部分がプライベートな場となる。これら明瞭な構成が、家族という小さな社会のための心地よい社会基盤となることを期待している。



敷地 / 北九州市

用途 / 専用住宅

構造 / 木造

規模 / 地上2階

敷地面積 / 181.57㎡

建築面積 / 63.34㎡

延床面積 / 112.33㎡


設計 / 正木知子 + 下田直彦 / カナバカリズ

施工 / 鬼丸ホーム

キッチン制作 / sync-furniture

撮影 / 下田直彦 / カナバカリズ