2018年 出隅の神棚

一般的に建築は大きすぎるので「縮尺」という概念を用いて設計をする。しかし神棚には縮尺がない。姿形はなにかのミニチュアのようでありながら常に1分の1の縮尺で現れる。神棚の目的は家の中に 社を建てるということであり、そのために小さな社にしなければならないという実利的な側面がある。しかし小さな社、人間が立ち入ることのない社ということで、そこにはヒューマンスケールを脱した 神棚特有の手法 ( マニエラ ) 化したスケール感が生まれている。その結果、意匠を決定づける駆動力は純粋に、プロポーションの美しさと社らしさを生み出すディテールのみとなるのである。 今回、各部分 のプロポーションは建築が記念性を発露するアスペクト比 (1:10) を基底として構成し、ディテールには全国の寺社の要素を取り込んだ。神棚 (= 社 ) にはある種の既視感が重要になるからである。人が何か を祈念するとき、眼前には何かその思いを受け止める依代が必要となる。その際、その依代には人が思いを込めやすいような何らかの演出が必要になってくる。今回用いた既視感という演出は祈念する者 の思いを受け止める受容器なのである。


設計 / 下田直彦 / カナバカリズ

施工 / 下田直彦 / カナバカリズ